【普段はリスクリワード1:1で勝率重視】
一般的なFXの教科書には「順張りでエントリーして損切りは早く行い、含み益は大きく伸ばしましょう。」と書かれています。勝率よりもリスクリワードを重視して1のリスクに対してリワードを1より大きくする事を推奨されています。具体的な推奨比率はFXの教科書によって異なりますが、多くの場合はリスク1に対して2~3のリワードを取りに行く様に書かれています。
熱心な勉強家の方は教科書通りに為替レートが上昇している時に買い、下落している時に売りでエントリーし、逆指値を10銭にするとしたら指値は20銭や30銭に設定して利食いを狙う事でしょう。しかしそのやり方でやると多くの場合は以下の様な経験をするに事なります。
「逆指値ばかりが約定する。たまに指値も約定して大きく利食い出来る事もあるが、勝率が低すぎてトータル損益はマイナスになる。」
「逆指値にはあっさりと到達するのに指値には中々到達せずイライラする。」
「日々約定履歴が損切りでいっぱいとなる。ずらりと並ぶマイナスの金額を見てうんざりする。」
「教科書通りに真面目にやっているのにお金がどんどん減って行く!」
上記の様な結果になるのは必然と言って過言ではない理由があります。
FXの値動きは60%~70%程度はレンジ相場と言われています。それに大きな値幅を伴っての推移となる時よりも大人しい値動きとなる時の方が多い傾向があります。
順張りでエントリーする場合は底値での買いや天井値での売りは出来ず、明確に上昇基調である事が確認出来てからの買い、又は明確に下落基調である事が確認出来てからの売りとなります。つまり底値買いや天井売りと比べてエントリーがかなり遅くなります。
トレンドが大きな値幅を伴いながら長く継続する事は稀ですので、上記のやり方ですと買った場合はそのレートから上昇する余地があまり無い、売った場合はそのレートから下落する余地があまり無いという事が多いのです。それなのに大きな値幅を利食いしようとしても中々利食い出来ません。それに対して、損切りは小さな値幅に設定されているので逆指値には容易く到達してしまうという訳です。
これでは10連敗や20連敗の損切りという結果も珍しくありません。20連敗しても21回目で20回分の損切りを上回る利食いが出来ればトータルではお金が増えて行きますが、「リスクリワード1:20以上を安定的に実現する」という事を継続して行うのは至難の業です。
お勧めは押し戻り狙いの順張りでエントリーを行い、利食いは無理に大きく伸ばそうとせずに値幅小さめの指値を設定。逆指値はその指値と同じ値幅にしてリスクリワードを1:1で勝率50%強を狙うというやり方です。普段はこのやり方でやります。ある条件を満たした時はやり方を変えます。その条件とやり方は次の項目で具体的に説明します。
ここで言う押し戻り狙いとは、上昇トレンドが確認出来る時にサポートライン近辺で反転上昇して上がっている最中に買い。又は下降トレンドが確認出来る時にレジスタンスライン近辺で反転下落して下がっている最中に売りという意味です。
【勝率の偏りと決済までの時間に注目】
常に上記で説明した手法でトレードした場合は同じ様な値動きが続いている状況ではだいだい同じ様な結果となっている筈です。しかしある時、明らかに利食いの回数と損切りの回数に大きな偏りが出る時が来ます。その際は以下の①~④をご確認ください。
①飽くまで一貫したルール通りのトレードが出来ているか。
②普段より値幅が大きくトレンドラインの傾きが急角度であるか。
③決済までの時間が短い。(エントリーしてから指値又は逆指値に到達するまでに掛かった時間。指値又は逆指値に到達する前に決済した場合は除く)
④トレンドチャネルの幅に比べて押し戻りの幅が小さく、ブレイクアウトが確認出来る。
①~④の全てが「はい」であり、勝率に大きな偏りが出ている場合は強いトレンドが長く継続している証拠と言えます。
以下の2つの画像をご覧ください。赤線がレジスタンスライン、青線がサポートライン、黒線がロウソク足の推移を表します。レジスタンスラインとサポートラインの間のゾーンをトレンドチャネルと呼びます。
上の画像が上昇トレンド中の一旦下落する場面での下落幅が小さく、ブレイクアウトが確認出来るパターンです。(トレンドチャネルの幅に比べて押し戻りの幅が小さい)
下の画像がトレンドチャネルの幅に比べて下落幅が大きく、上方向へブレイクアウトしての更なる上昇が見られないパターンです。
上の画像の場合は下落幅があまり無いので、順張りで買いエントリーすれば逆指値には簡単に到達しません。それに対して大きな値幅を伴っての強い上昇トレンドが発生中ですので、逆指値と同じ値幅の指値には短時間で到達します。指値に到達後も勢い止まらず更に大きく上昇する可能性が高いと言える状況です。これが利食いと損切りの回数に偏りが出る理由です。この条件が整えば、普段より指値を逆指値より広くしても勝率が低下し難くなります。更に、ブレイクアウトが高確率で発生する状況ですので、遅れて買いエントリーしても指値に届く可能性が比較的高いと言えます。つまり積極的に買い増しし易い状況です。具体的なポジション追加のコツは次の項目で説明します。
【プラスの異常値だけが出る様にする】
ここで言うプラスの異常値とは、リスクリワード1:1で勝率50%強の時のトータル損益より圧倒的に大きなプラスの金額のトータル損益の事を指します。逆にマイナスの異常値とは、圧倒的に大きなマイナスの金額のトータル損益の事を指します。
「上昇して行く可能性が高いと分かっているなら複数回に分けてポジションを入れるより、結局はポジションサイズを大きくするのであればレートが低いうちに一気に買った方が良いのでは?」とお考えかもしれません。
しかし複数回に分けてポジションを入れた方が良いと言える根拠があります。この項目ではその理由とやり方を解説し、効果的なポジションの増やし方とリスクリワードの調整方法をお伝えします。
【一回のエントリーのポジションサイズを小さくすべき理由】
一回のエントリーのポジションサイズを小さくすべき理由は大きく分けて3つあります。
1つ目を解説します。
FXに絶対に勝てる手法は存在しません。極端な話、全財産賭けて「この勝負に負けると全てを失う」という程の大き過ぎるポジションサイズでトレードすれば、どんなFXの達人であってもいずれ全てを失います。
そこまで極端でなくても大き過ぎるポジションサイズでトレードすると、一回の負けで証拠金を大きく失ってしまったが故に次のトレードで保有出来るポジションサイズが前回のポジションサイズより少なくなってしまうリスクがあります。
そうなると、一回の負けを取り戻す為に複数回の勝ちが必要になります。勝てる確率と負ける確率が大差無い中で、一回の勝ちの利益を一回の負けの損失が上回っていると、損失を取り戻す事がとても困難となります。
2つ目を解説します。
勝てる確率が普段より上昇している時や、勝率を下げずに指値を広く逆指値を狭くが実現出来る事が予想ではなく現実となっている事が確認出来てからの方が手堅い勝負が出来るからです。
偶然に依存してハイリスクをとる行為は合理的ではありません。FXは不合理なトレーダーからは凄まじい勢いでお金を合法的に奪って行く世界です。必ず合理性の有るトレードを行う様に心掛けましょう。
3つ目を解説します。
「プラスの異常値だけが出てマイナスの異常値は出ない」を達成する為です。
異常値を出す為の方法は、ポジションサイズを大きくするか、一回の決済で大きな値幅を決済するかのどちらかです。
一回のエントリーのポジションサイズを大きくする方法では確かに利食いの金額が大きくなりますが、それと同等の損切りの金額が大きくなるリスクを負う事になります。つまりプラスとマイナスの両方の異常値が発生する可能性が等しく発生する事となりますので優位性はありません。寧ろFXは注文数量が大きければ大きい程約定力が低下する傾向がある事や、運悪く連敗が続くと急激に資金を減らしてしまって取り戻す難易度が跳ね上がる事を考慮すれば不利になります。
一回の決済で大きな値幅を決済する方法に関しましては、常に大きな利食いが出来るチャンスという訳ではありませんので、根拠無く単純に指値を大幅に広げるだけでは中々利食い出来ません。逆指値は広げず狭いままだと高確率で約定履歴が損切りだらけとなって着実にお金を減らし続ける事になるでしょう。かと言って逆指値だけ広げては所謂「コツコツドカン」になりますし、指値と逆指値の両方を広げてはプラスの異常値だけが出るとは言えません。更に言えばポジションを長時間持ちっぱなしにすると上げ下げの波を取る事が出来ず、資金効率が悪いと言えます。
プラスの異常値だけが出る様にする為には一回のエントリーのポジションサイズを小さくしつつ巧みにポジションを追加して「利食いの時のポジションサイズは大きい。損切りの時のポジションサイズは小さい。」という状態にするべきなのです。
明確にトレンドが出ている時に順張りでエントリーし、最初はリスクリワード1:1で考えて逆指値を設定。上手くトレンドに乗れたと確信したら、含み益の増加に合わせて逆指値の値幅を狭く変更する事でリスクリワードを改善します。初めから指値を広く、逆指値を狭く設定する事は推奨しておりません。
【ポジションの追加とリスクリワードの調整方法】
まずはどういう条件を満たした時がポジション追加のチャンスなのかを把握しましょう。【勝率の偏りと決済までの時間に注目】の項目で触れた通り、リスクリワード1:1でのトレードで指値(又は逆指値)に到達する時間が普段より短く、利食いの回数と損切りの回数に大きな偏りが出ている時が条件を満たした時です。これは押し戻りが小さい(上昇トレンド中の下落が小さい。又は下落トレンド中の上昇が小さい)強いトレンドが継続している証拠です。
条件を満たしている事が確認出来たら以下の手順で【順張りでエントリー・ポジションの追加・逆指値の設定レートを狭く変更】を一回のエントリーのポジションサイズを小さめにして行います。
①順張りでエントリーする。必ず逆指値を設定する。決して外さない・広げない。
②トレンドが継続している間は利乗せ(前回エントリーしたポジションが含み益の時にポジションを追加)でポジションを追加する。決して難平(前回エントリーしたポジションが含み損の時にポジションを追加)でポジションを追加しない。
③ポジションを追加したらすぐに逆指値をその時点で適切な値幅に設定し、全てのポジションの逆指値を最も狭く設定した逆指値に統一する。
④ ②と③を逆指値が約定するかトレンドの勢いが弱まるまで継続する。
以下の画像は上記の①~④の手順のイメージ画像です。
上記の①~④の手順を【例】で解説します。
【例】
①ドル円が明確な強い下降トレンドとなった為、売りでエントリーしました。133.8で約定。逆指値20銭。逆指値レート134.0。
②133.6の時に売り増し。逆指値20銭。逆指値レート133.8。①のポジションの逆指値レートも133.8に変更。
③133.4の時に売り増し。逆指値20銭。逆指値レート133.6。①と②のポジションの逆指値レートも133.6に変更。
④上記と同様の手順で売り増しと逆指値の設定レートを狭く変更を繰り返して逆指値レートを132.2に設定した所で逆指値が約定してポジションが全決済されました。最終的に以下の表の結果となりました。
上記の様にリスクは常に限定的にしてリワードはトレンド終了までとことん伸ばします。
以下の説明はスリッページが発生しなかったものとして説明します。
上記の【例】ですと、一回目のエントリーの時点で逆指値が約定した場合は損切り20銭です。
二回目のエントリーの時点で逆指値が約定した場合は損切り20銭と建値決済(±0銭)で合計損益は一回のエントリー分のポジションを損切りしただけの場合と同じです。
三回目のエントリーの時点で逆指値が約定した場合は損切り20銭・建値決済(±0銭)・利食い20銭で合計損益は0です。この時点でもう損するリスクはありません。損益±0か儲かるかのどちらかです。
四回目に至っては逆指値が約定してもトータルはプラスです。最早「リスクリワード」ではなく「リワードリワード」です。四回目のポジションの指値を逆指値と同じ20銭にしてそのレートに全てのポジションの指値を統一するならば、逆指値約定の場合は+40銭、指値約定の場合は+200銭の利益です。「リワードリワード1:5」となります。儲かる以外の結果はありません。40銭と200銭では5倍も違いがありますが、指値と逆指値の設定幅が同じなので、どちらに到達する確率もスプレッドを除けば同じであるという点も注目すべきポイントです。これはつまり損失を負うリスクが無く、且つ上手く行く確率を低下させずに利益を5倍にするチャンスを獲得出来る手法という事です。
五回目以降も儲かる以外の結果は無く、逆指値が約定するまでは利益が増えて行く一方となります。しかもそれまでと同じ値幅でも利益が増える速度が上がって行きます。その事は上記の表をご覧いたたければはっきり見てとれます。
この手法ならば最悪の結果となっても一回のエントリー分の損失しか発生しません。それに対して、利益は逆指値が約定するまで利益が増える速度を速めつつ際限無く増えて行きます。つまり利食いの時のポジションサイズは大きい。損切りの時のポジションサイズは小さい。利食い幅は無限大。損切り幅は小さく限定的となります。これぞ正に「プラスの異常値は出るがマイナスの異常値は出ない」を合理的に実現する方法であると言えます。
【まとめ】
普段はリスクリワード1:1で勝率重視。
条件を満たせば順張り・利乗せでポジションを追加。ポジション追加時に逆指値を狭く修正。含み益は逆指値に到達するかトレンドの勢いが弱まるまで保有する。
条件は一貫してルールを守り通した上で、トレンドラインの確度が急角度・決済までの時間が短い・押し戻りが小さい。これら全てを満たしている時は利食いと損切りの回数に偏りが出る。
この手法を使うと、勝率を低下させずに【損小利大】を狙える。
#この記事は筆者(tetsuryu)の独自解釈であり内容の正確性を保証するものではありません。